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2階カスタムショップ&ビンテージ担当の藤川です。
カスタムショップ製レスポールで賑わう2階ですが、立て続けにビンテージレスポールが入荷してきました。
『ビンテージ』という言葉の重みから単純に畏敬の念を抱いてしまうのがギター好きの性というものですが、今から遥か昔、これらのギターが生まれた丁度その頃、世の中では一体何が起こっていたのでしょうか?
そんな時代へ思いを馳せながら改めてギターを見て、有る事無い事色々と妄想してみたいと思います。
使う資料は『ウィキペディア』と『グーグル』。
広く浅く、調べてみます。
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かなり軽量(3.30kg)な1957年製のスペシャル。
程良い使用感はありますがラッカーの艶味もしっかりと残ったこちら。
よく弾き込まれたと思われる、鳴りの良い個体です。
ビンテージらしい細いフレットは、綺麗にリフレットされている可能性がありますが、オリジナルのようにも見えます。
それ以外はオリジナル、ハンダバージンのようです。
ケースは社外品。
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1957年といえば、現安倍総理大臣の母方の祖父、岸信介第一次内閣が発足したのがこの年の2月。
その少し前の1月、沢村栄治と並びプロ野球黎明期の大投手として活躍したロシア出身のスタルヒンが交通事故で亡くなったのもこの年になります。
また、『Mr.プロ野球』長嶋茂雄が立教大学4年生で、当時の記録である通算8ホーマーを達成した年でもあります。(後に新聞記者から『長嶋君は大学時代、学部は何だったの?』と聞かれ、『馬鹿だな! 野球部に決まってるじゃないか!』と答えたとか、答えてないとか)
また、日本で初めてコカコーラが発売されました。
因みに、前年の1956年にはエルビス・プレスリーの『Heart Break Hotel』が発売され、全米1位を獲得。有名なエド・サリヴァン・ショーでのパフォーマンスが話題となり、翌57年に主演映画『Jailhouse Rock』に出演、その主題歌も大ヒットし、一躍時の人となるのがこの頃。
また、既にChessレコードよりデビューしていたロックンロールの開祖チャック・ベリーがファースト・アルバム『アフター・スクール・セッション』を発売したのも57年です。
バディー・ガイがルイジアナ州からシカゴに活動の拠点を移したのもこの頃、マジック・サムの初レコーディングも57年と、まさにシカゴのブルースムーブメントがピークへと向かっていたその頃になります。
そして、このギターと同級生なのが森末慎二さんや山下泰裕さんらロサンゼルスオリンピックで活躍した世代のアスリートや鹿取義隆さんや篠塚和典さん、高橋慶彦さん、北別府学さん、岡田彰布さん、元阪神の助っ人ピッチャーのオルセンやヤクルトのホーナーら80年代のプロ野球を盛り上げたスター達の世代となります。
格闘技界では佐山聡さんやジャッキー佐藤さん等も1957年生まれです。
70年代中期のスーパーアイドル、ピンクレディーの増田恵子さんも同級生。
また、アルカイダのオサマ・ビンラディンも1957年生まれとのことです。
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こちらは1958年製、レスポール・ゴールドトップ、珍しいダークバックとなります。
しかも、タグ付き!
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まるでカスタムショップ製かと思うほど、エクセレントコンディションのこちら。3.96kgと程よく軽い個体、握り心地の良いやや細めのラウンドネックシェイプ、衰えを知らない艷やかなトーン等、絶品です。
シュリンクしたオリジナルペグ、割れやすいジャックプレートはケースの中に保管されていますが、それ以外はオリジナル、半田バージンと思われます。
また、綺麗なブラウンケースも奇跡的です。
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そして1958年といえば、先の長嶋さんがジャイアンツに入団、金田正一投手に4三振というほろ苦いデビューとなったのが4月5日の開幕戦です。
また、このギターと同級生なのが東京のシンボル『東京タワー』です。
映画『3丁目の夕日』で窓の外に東京タワーが着々と出来上がっていく様子が描かれていましたが、まさに同じ頃産声を上げたのがこちらのギターとなります。
アメリカ初の人工衛星、エクスプローラー1号が打ち上げられたのもこの年。
第二次世界大戦、朝鮮戦争を経て、米ソの冷戦、また共産圏でも中ソ対立が顕著となり、この年の10月に中国軍が撤退しましたがアメリカ軍(国連軍)は駐留を続けたことにより南北朝鮮問題の火種が燻る事になるなど、東西の緊張が激化。
そんな背景の中で宇宙に打ち上げられた人工衛星へのアメリカ国民の関心は高く、未来を予感させるキャッチーなネーミングのギターである『コリーナ・エクスプローラー』や『フライングV』等がギブソン社より発売されたのも同年となります。余りにも斬新過ぎたこれらのギターは人工衛星とは逆に不発に終わり、世間に認められるまでに10年の月日が掛かることになります。
東京都の学校給食に牛乳が加わるのもこの年、1958年だったようです。
2月には第1回日劇ウエスタンカーニバルが開催、(これを記念し、2月8日はロカビリーの日と制定されました。)1週間で45,000人を動員、ドーム球場や日本武道館と言った大きな箱物が存在しなかった50年代当時としては異例の記録となりました。これが50年代のロカビリーブームを生み、60年代後半にはGSブームを巻き起こすことになります。
GSブームの終焉と共に客足も遠退き、70年代には主にジャニーズ事務所やスクールメイツのタレントをメインとしたアイドルショート化し、75年8月にはキャンディーズの単独ショーも『ウエスタンカーニバル』として行われたことがありました。
日本が誇る名車『スバル360』、ホンダの『スパーカブ』、日清の世界初のインスタントラーメン『チキンラーメン』も同級生。
TVでは月光仮面が始まり、覆面ヒーローに日本中が熱狂します。
『打撃の神様』、赤バットの川上哲治が現役を引退したのも1958年。
マディー・ウォーターズが初のイギリスツアーを行ったのもこの年。
エルビスは陸軍の徴兵通知を受け取り、西ドイツにあるアメリカ陸軍基地に1960年3月まで勤務することになります。
レスポールがゴールドトップからサンバーストに変わるこの年、後の世界の音楽界に多大な影響を与えるミュージシャンが多く生まれたのも1958年です。
天才プリンスやマイケル・ジャクソン、マドンナは同級生。
日本でも小室哲哉さんや石川さゆりさん、秋元康さん、玉置浩二さん、中3トリオの内の森昌子さんと桜田淳子さん、原田真二さん等、錚々たる面々が誕生。プロ野球界の原辰徳さんも同級生です。
同じ頃、伝説のブルースマン、ビッグ・ビル・ブルーンジーが60年の生涯を終えました。
こちらは1959年製のバースト。
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写真ではわかりにくいですが、珍しいバーズアイの"ブリスター・トップ"が硬派な色気を魅せる圧倒的な存在感の1本です。
程よく褪色した仄かなアイスティーの色味とセクシーなトップカーブ。
乾ききったラッカーはガラスのような透明感を持ち、人工的なエイジングでは再現できない、悠久の時間が凝縮されたような佇まいとなっています。
キュッと締まった細身のラウンドネックシェイプ、バランスの良い重量感、弦に軽く触れただけで音楽が生まれてくるようなパワーと優しさを共存させた極上のサウンドを響かせます。
ハンダバージンのこちらはフロントにゼブラ、リアにダブルブラックのオリジナルPAFを搭載。
Dimensionの増崎孝司氏による試奏動画はこちら
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前年の甲子園での優勝投手、後の『世界のホームラン王』王貞治が鳴り物入りで読売ジャイアンツに入団した1959年、デビューした4月に早くもプロ入り1号ホームランを飛ばすも本格的な開花とは行かず、荒川道場で厳しい特訓を受け1本足打法を習得するにはまだまだ時間を要することになります。
同じ頃、2年目の長嶋さんが有名な天覧試合でのホームランを放ち、『記憶の男』としてその勝負強さの片鱗を見せつけたのもこの年になります。
この年の1月1日、キューバのカストロが、同士チェ・ゲバラらと共にキューバ革命を実現、世界に衝撃を与えることになります。
南極の昭和基地にて置き去りにされていたタロとジロの生存が確認されるのがその2週間後。
9月にはソ連の月面探査機ルナ2号が月に衝突。初めて月面に到達した人工物となります。
このギターと同級生となるのがアメリカのバービー人形とナイロン製パンティーストッキング、週刊少年マガジン、同じく週刊少年サンデー、日産スカイライン、ヤマハ(当時は日本楽器製造)のエレクトーン、ヤン坊マー坊天気予報、緑のおばさん(当時の日給は350円)。
また、マイルス・ディヴィスが名盤『カインド・オブ・ブルー』を発表。これまでのコード進行に囚われないモードの方法論を示し、モダンジャズの金字塔としてその地位を確立します。まだビートルズが世に出る前、今考えてもジャズという音楽の早熟さを感じずにはいられません。
ビリー・ホリデイが44歳でその生涯の幕を下ろしたこの年、代わって新しい生を受けたのがブライアン・セッツァー、山口百恵さん、神保彰さん、嘉門達夫さん、前田日明さん、ヒクソン・グレイシー、元大洋のポンセ、榊原郁恵さん、加藤鷹さん、2代目引田天功さん等など、個性溢れる面々となっています。
3本のビンテージギターから、個人的な趣味に基づき歴史を紐解いてみました。
ここまで調べてみて振り返ってみると、『だから何だ?』という気分にもなりますが、今とは違う時代背景の中で生まれたギターと奏でてきた音楽を妄想するのも面白いものです。
この後の60年代、70年代、80年代と激変する音楽のスタイルや国境を超え、今現在日本で、更に新しい音楽を奏で続けるこれらのギターは今でも、またこれからも現役の銘機です。